最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

【レンタル】帰ってきたヒトラー 評価 感想 レビュー ★★★★★

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全然洒落になってない。

コメディーかと思ってみたら・・・

悲鳴が聞こえてきた。

ドイツ社会の抱える毒が噴出する衝撃作。

しかも「ヒトラー」そっくりさんに対する

多くの市民の、おそらく生の反応が

ふんだんに盛り込まれていて、

テレビ局の局長争いという

‟コミカル”な寸劇がなければ、

マイケル・ムーアのような突撃系の

ドキュメンタリー映画としか思えない。

ドイツは、そしてヨーロッパは、

既にここまで追い込まれていたことを

ちゃんと分かっていなかった。

 

この映画で、ヒトラーは、

誰よりも勉強家で、

人の心の掴み方を知っている。

舌鋒鋭く、ドイツが抱える問題を指摘し、

誰もがすぐに分かる言葉で

‟ビジョン”を示す。

現代に彼が蘇ったなら、

ドナルド・トランプ大統領のやり方など

さぞかし稚拙に見えるのではないだろうか?

 

1930年代のドイツでは、

正に映画のようなことが起こり、

ヒトラーは独裁する権利を

国民から付与されたのではないだろうか?

 

戦後、ヒトラーの台頭を許した反省から、

ドイツ、そしてヨーロッパは

二度と危機を繰り返さぬと、

連帯を重んじ、人の流れを自由化し、

多くの移民、難民を受け容れてきた。

日本がほとんどやってこなかったことだ。

その結果、ドイツ・ヨーロッパの民は

いま限界に達してしまっている。

 

英国のユーロ離脱も、

ヨーロッパの極右勢力拡大も、

70年の歩みの「結果」として

起こっていることを、

我々は冷静に認識すべきだと思う。

 

アメリカもだ。

トランプ大統領が繰り出す

様々な攻撃の原因が、

トランプ氏個人の性格にあり

トランプ氏が代われば、

また元の世の中に戻ると考えるのは、

楽観すぎる。

これまでの歴史の結果として

トランプ大統領が登場したことを

認めるべきなのだ。

トランプ氏の言う通り、

そして映画でヒトラーが言う通り、

彼らは選挙で選ばれたのだ。

 

だとしたら、この先、何が起こるのだろう。

危機を避けるために何ができるのだろう。

この映画は、そのためにつくられた

きわめて‟活動的”な映画だと思う。

公共の電波を利用するテレビが、

常に中立的かつ、マイルドであることを

求められる中で、

時代を見通すために映画や本の意義が、

どんどん重くなっていることを

改めて感じさせられた。

 

映画の中で、ジャックラッセルテリア

殺される、というシーンがある。

非常に衝撃的なシーンだ。

これは、この70年の変化を

最も象徴するシーンだとも思った。

この70年、先進国で、犬の命ほど

重くなったものはないのでは。

今では映画の作り物のシーンでも、

このような残酷シーンを目にすることは

ほとんどなくなった。

冷静沈着で現代を鋭く読み切ったはずの

ヒトラーが、唯一犯した失敗が

この犬の殺害、というのが

非常に鋭い視点だと思った。

犬の命をこれほど重んじる

ことができる平和は尊い

その平和を守るためには、

世界に平和を広げるための

弛まぬ努力と闘いが必要なのだと思う。