最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

【レンタル】ニュースの真相 評価 感想 レビュー ★★★★★

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問題の「文書」を作成したのは誰か?

動機を持ち得るのは何組かいて、

その能力を持ち得る人も限られている。

しかし真相は闇の中だ。

「文書」を作成し得るものの中に、

真相に迫った取材班自身も含まれる。

しかし、敢えて言えば、そのことは、

この映画の価値を棄損しないと思う。

 

問題は権力の疑惑を追及し、

センセーショナルな報道をしようとする

報道の「アニマルスピリット」の敗北にある。

巨大メディアが権力に屈し、

早々に白旗を掲げ、自らの生命線として

抱えてきた「アニマル」を

ハンターの生贄として

差し出してしまったことだ。

 

ウラ取りが甘い、というのは簡単だ。

しかし対象が権力者であり、

また軍隊という垂直型の圧力機関である場合、

100%の裏どりは至難の業だ。

100%でなければ提起することさえ許さないのなら、

それは言葉狩りであり、

言論の自由の封殺ではないだろうか?

 

テレビ局は、

公共の電波を使うことを許される代わりに、

公的な報道機関であることを

義務付けられている。これは日本も同じ。

しかし実際には、NHK以外は

電波使用を認可された1民間企業に過ぎず、

収入は広告料などに依存している。

 

企業が生きていくためには視聴率が重要で、

報道はあまり金を生まない。

『60ミニッツ』はそれを両立していた

貴重な報道番組であったが、

挑む巨大な取材対象を考えると、

予算も、人員も、期間も、全然足りない。

これはどこでも同じだ。それでも、

本に書かれていることが確かであれば、

よくやっていたと思う。

でもそれが限界なのだ。

 

ウラどりが100%でなければ、

放送すべきでない、というのは簡単だ。

でも、そうしたら、ほとんどの

調査報道は、投資を回収できなくなる。

つまり権力を追及するような

調査報道自体をやらなくなる。

その時に、権力へのチェック機能を

国民は放棄するのか?

それを独立した報道機関がやるという、

第二次大戦後の自由のためのインフラは

どうなってしまうのか。

 

「文書」については、裏どりが揺らいだ。

ただ、主旨であった大統領への優遇や、

職務放棄の疑惑は、限りなく

黒に近いグレーだったのでは。

しかし問題は文書が「word」かどうかなど

一つ一つの「事実」へと

矮小化された方向に過熱。

権力者の疑惑という主旨は

次第に置き去りにされてしまう。

それは今の商業メディア全体の

大きな問題点でもある。

 

この映画の 原題は『Truth』

大統領の疑惑の真相を追った物語であり、

報道機関の敗北の真実を語る映画である。

現代における『真実』の在り様を描いていて、

『ニュースの真相』という邦題自体が、

問題を矮小化し、観客・視聴者が

イメージしやすい所に

落とし込んでしまっている。

大統領の疑惑と、報道機関の敗北の

真実を描いた映画なのに、この邦題では

「あるニュース番組の不祥事の真相」

にしか見えない。

このような矮小化と、

興味本位の取り上げ方が問題だと、

この映画が語っているのだが、

それでも商売を考えると、

そうなってしまうものなのだ。

 

アメリカでは今「フェイクニュース」という

言葉が飛び交い始めている。

言論の自由が揺らいでいる。

こんな時こそ本当に必要なのは

ネット上を飛び交う真偽に責任を持たない

❝ニュース❞ではなく

権力と対峙する報道機関の調査報道だと思う。

その時に、国民と報道機関が分断されてしまうことが、

最も危険なのだ。