最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

【レンタル】海街diary 評価 感想 レビュー ★★★★

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今年は見る邦画がみな後悔しないものばかり。

これまであまりに見ていなかったので、

今年が豊作なのか、これまでも充実していたのか?

分からない!ということで、

タイトルだけは聞いていた話題作を今さら鑑賞。

個人的に“邦画祭り”になっています。

 

本作は、最初のお父さんの葬式の一連で、

既にグッときてしまい、

以降、4人の女性が織りなすストーリーに、

グイグイと引き込まれていきました。

自分に娘ができてから、この手の話に弱い、

いうのもありますが、

登場人物を、そっと優しく見守るような視点。

家族に起こることを、訥々と描く姿勢。

突然、突拍子のないことは起こらないという安心感。

だから、細かな心情描写に感情移入しやすい。

これは、何処かで見たことあるような感じ……

あっ『秋刀魚の味』だ!『東京物語』だ!と

思いました。

 

そこから、この映画は、

“今をときめく女優さんの魅力をフル活用して、

現代に小津安二郎の世界を蘇らせようとした作品”

と勝手に定義し、勝手に比較して見てました。

 

古民家の居間。

庭があって、縁側があって、卓袱台あって。

朝食のシーンが何回かあって。夜酒盛りしてたり。

居間を中心に、四姉妹の暮らし、

積み重ねていく時間を丁寧に描いているのが、

小津作品を思い浮かべた、最大のポイントでした。

家に帰ってきた!という時の玄関の描き方も、

それぞれ印象的で、同質のシーンな気がしました。

 

女優の魅力をフル活用…は、

長澤まさみさんの美脚を舐めるようにドリーしていく

ファーストカットや、

広瀬すずさんの魅力の描き方の執念深さ。

全編通して美しいものを、美しいものとして

描きたいという、執念を感じました。

逆に綾瀬はるかさんは、終始抑制的で、地味。

あれだけ地味な演出でも耐えられる所が、

凄味かもしれませんが。

ストーリー中、伏線をはったものの、

結末があっさりしているものがいくつかあり、

勝手な想像ですが、

実景や、女優さんの美しさの表現に尺を割き、

落としたシーンも大分あるのではないかと…

だとすれば、個人的には非常に共感できる部分で、

是枝監督の出自がドキュメンタリーだったこととも

無関係ではないと思います。

 

もちろん小津映画とは違う部分もあり、

小津映画ならFIXのカットが

微妙に動いていたりして、現代風。

重要なモチーフとなる「食」は、

梅酒や、しらすは小津映画ぽい(笑)

気がしますが、

アジフライやカレー、ポテトサラダなんかは、今風の「和」かと。

 

勝手な小津映画との比較で、さらに言うと、

惜しむらくは、キレがやや欠けたかなと思いました。

生活の中にある、ある種の「毒」みたいなもの。

母が、いきなり自宅の売却を切り出すとか、

うるさ型のおばあさんとか、

提示されてはいたのですが、

もう少し、日常の厄介ごとに、

ピンと張り詰めたような緊張感があると、

より味わいがあったかと。

でも個人的に、こういう優しい映画、大好きです。

順番逆ですが、最近見た邦画が

刺激的な「毒」のオンパレードだったので、特に。

【レンタル】桐島、部活やめるってよ 評価 感想 レビュー ★★★

 

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『何者』が思いの外、よかったので、

実はまだ見てなかった、朝井リョウ原作の本作を

早速レンタル。

瑞々しい言葉のやりとりから滲み出る

独特の緊張感は、監督が違えど『何者』と共通。

何気ない会話の間に、実は起こっている

それぞれの感情の起伏を捉え、

ドラマにまで引き上げて表現するのが、

朝井小説の真骨頂なのだろう。

 

その意味では『何者』で登場する、

人を分析するのが得意な脚本家の拓人は、

朝井さんの分身であり、

ツイッターのエピソードは、

原体験そのものなのではないか…

なんて言いながら、まだ著作にあたれてません笑。

 

若くして作家になったから、

若い人の言葉の種が豊富で、映像化しやすい。

余計な言い回しが無いから、役者も乗っかりやすい。

結果、あっという間にストーリーに引き込まれる。

「進路」という言葉が重みを増す高校2年。

これまで夢中になってやってきたことの

自分の実力が、ある程度見えてしまっている。

それでも、自分を信じ、

無我夢中でやり切って、敗れた方が、

実は、次には進みやすい。

でも、できる子ほど、敗れる前に、

自分で自分の判断を下そうとするから、

しんどくなる。

あの頃は、あの頃なりに

真剣に悩んでいたことが生々しく蘇ってくる。

 

同じ日を異なる目線で見せる手法が成功しているが、

そんなに簡単な作業ではなかったと思う。

 

松岡茉優さんは…ほんとに若くして職人!

東出昌大さんの役柄は、セリフが非常に少ないが、

表情だけで映画のテーマを紡ぎ出している。

やはり、顔のパーツが大きい役者さんは、

得だと思ってしまった!

【レンタル】戦場にかける橋 評価 感想 レビュー ★★★★

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クワイ河に虹をかけた男』を見て、
幼い頃にテレビで見たこの作品をレンタル。
「サル、ゴリラ、チンパンジー♪」と歌っていた
クワイ河マーチ』の記憶しかなかったのですが、
今回『クワイ河に虹をかけた男』を観たことで、
凄惨な背景をイメージしながら鑑賞できました。

日本人の大佐は収容所で、イギリス人捕虜に対し、
死を恐れない「誇りと恥」を説き、
生き恥を晒した”と捕虜を見下すのに対し、
イギリス人大佐は捕虜となっても
「法と主義」の下で生きることを宣言し、
“非文明的な”日本のやり方に決して屈しません。

それは日本人の考え方の根拠が、
“お上”に従うことを第一とするのに対し、
イギリス人は“人間の尊厳”を判断基準にする、
という対比に見えます。

そこに、軍人ではない医師の現実主義や、
アメリカ人捕虜の個人主義的な視点が重ねられ、
重厚かつ、エンターテインメントとして、
楽しめる作品に仕上がっています。

「人間の尊厳」を説くイギリス人大佐も、
絶望的な状況の中、
日本を利する橋の建設であっても、
それに没頭することでしか、自らの信念を
維持できなかったことも示されます。
物語の結末には、強い反戦のメッセージを
読み取ることができます。


米英合作で制作され、
1957年に英米日で公開されたこの映画は、
アングロサクソンの真の強さが、
戦争で勝つこと以上に、戦争の極限状況の中でも、
人間の尊厳を守ろうとすることにあると
雄弁に主張しています。

それは『クワイ河に虹をかけた男』の永瀬さんが
「戦後処理で負けた日本は、本当に負けた」と
語ったのと、表裏の関係にあるテーマです。

米英が終戦からわずか10年余りで、
このテーマを、一流の娯楽作品として公開し、
同時に日本でも上映したことを考えると、
プロパガンダ的な意味合いも感じますが、
やはり彼我の「国力」の差は歴然としていて、
先の大戦が如何に無謀だったか思い知らされます。

戦後70年が経過した今、
日本は普遍的な人間主義を掲げる国として、
どこまで成熟できたのだろうか…
もっとも、今のアメリカやイギリスでは、
この映画を作った頃のような懐の深さが
失われつつあるのかもしれませんが。

何者 評価 感想 レビュー ★★★★

 

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予告編を見て、全然ピンときてなかったんですが、

レビュー読んで観たくなり、行って来ました。

映画館では高校生くらいの若い客の姿が目立ちました。

感想としては……

素晴らしかった‼︎ 

エンドロール、テーマ曲に煽られて広がる余韻は

ほろ苦いけど、甘さも残り、爽快でもありました。

 

40歳を越えた自分は最初、“就活”の話でしょと、

自分が、とうの昔に通り過ぎた通過儀礼の話と、

油断しながら見始めました。

最近の若い人の会話の仕方って、

こんな感じなんだろうな…

雰囲気がよく伝わってくるな…

なんて思いながら観ていたのですが、

話が転がり始めると、

今の自分に、グサグサと刺さってきます。

「何者」というテーマを表現するのに、

就活が、恐ろしく分かりやすいだけで、

そのテーマ自体は、一生続く、

普遍的なものだからです。

 

ぜひ劇場で観て欲しいのでネタバレは避けますが、

運良く志望通り就職した人も、

不本意な形で就職した人も、

独立した人でも、

仕事を辞めて主婦になった人も、

誰もがみな、

この『何者』というテーマからは逃げられない。

最終学年に頑張った「就活」ぐらいでは、

到底答えが出るテーマではないのです。

ただ、それを最初に、否応なしに

突きつけられるのが「就活」というだけで…

 

20代の彼らは、

「何者になれるか?」と考えますが、

私のように40代に入ると、

自他共に認めるような「何者」にも

なれないかもしれないけど、

それでも存在し続ける自分とは「何者なのか?」って

考え出す問題かなと。

そういう意味では、大人が観た方が、

味わい深い映画かもしれないと思いました。

 

映像的には、まだ近くにいるのに

すごく遠くに行ってしまった感じがする、

閉所での、奥行きあるロングの撮り方が印象的でした。

劇中劇の使い方は、よく練られていて斬新。

でも尺が短い予告編で使うと逆効果な気がして、

使わなければよかったのに…と思いました。

 

未読の原作のパワーを感じ、

それを表現仕切った監督と、

役者陣の素晴らしさを感じました。

菅田将暉さん、今なぜ旬なのか、

少し分かった気がしました。

あの不安定な感じが、くすぐるんですね。

二階堂ふみさん、相変わらず

一度見てしまったら、

他の女優さんの起用が全く想像できないぐらい

役をモノにしています。

 

時間作って、原作にあたってみたいです。

おすすめです!

永い言い訳 評価 感想 レビュー ★★★★

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繊細な心理描写。映像センスにより、

いつの間にか、観ている人の心のひだを触り

平気ではいられなくする。

泣けない映画かなと思っていたら、とんでもなかった。

 

まず、子育てで起こることの表現が非常にリアル。

子どもは素直だ。

我が儘に生きているようで、

心を寄せてくれる人には、心を開く。

手持ちカメラの長回しで子育てのリアルを引き出し、

編集点を増やしてでも、リアルを紡ぐ手法で、

観ているものを、ぐっと感情移入させる。

 

一方で、自宅にいる時の幸夫君の映像は、

一貫して突き放してみせる。

部屋は広くて快適そうだが、一人。

幸夫君が感情的になっていても、

取り乱していても、カメラは遠ざかっていく。

幸夫君がいつ「生きている」のかを、

構成によって明示していく。

テレビ取材の様子、

スタジオでの収録の様子なんかも、リアル。

徐々に孤独に陥っていく、

本木雅弘さんの表現が素晴らしい。

 

人は他者との関わりの中でこそ、生きていける。

考え方が違う他者と関わることは面倒くさいが、

そこには生の実感が伴う。

他者と真剣に関わらなければ、

面倒くさいことも起きないが、

生きていく意味も見出しにくくなる。

人から求められることは、

人生最上の喜びをもたらしてくれる。

 

非常に難しいテーマを、この映画は、

一言も説教することなく見せつける。

こういう繊細な心理描写は、

邦画の真骨頂だと思います!

おすすめです。

【レンタル】ちはやふる 下の句 評価 レビュー 感想 ★★★★

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小学生の娘と上の句に続いて鑑賞。

上の句は想像以上に面白かったのですが、

さすがに下の句まではどうだろう…と

半信半疑だったのですが、

これは上の句を超える面白さで、

最後は、感動してしまいました!

きっと、原作の内容が相当濃いのでしょう。

 

千早が、新と太一とのカルタを通じた友情に、

あれほどまでに、こだわる理由は、

三人の幼少期のエピソードを

原作で勉強する必要がありそうですが、

三人にしか分からないキズナがある、

という前提で見れば、

スポ根+友情+ちょっと恋愛

のストーリーとして、ツボを外さない

王道のつくりです。

特に千早が、仲間の信頼を受けて完全に覚醒し、

クィーンと激動する様は、

スポ根好きの涙腺を刺激するのに充分値する激闘です。

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またスポ根+友情モノでは、主人公が

「悟って、走る」シーンが不可欠ですが、

広瀬すずさん演じる千早が

走るシーンは本当に美しいです。

きっと走るのが本当に得意なのでしょう。

 

個人的には、母校の高校が、

競技カルタで日本屈指の強豪高で、

映画でも、チラホラ仮名で出てくるのが

嬉しかったです。

原作ではより重要なライバルとして登場するらしく、

ローカル局では、

広瀬さんが母校を訪ねるバラエティ番組もあったよう。

高校の時はあまり関心ありませんでしたが、

あんな激闘の末、全国トップに立っていたんだなと、

感慨深いです。

なので、後味の良さと、

個人的な思い入れもあり、評価高めです!

クワイ河に虹をかけた男 評価 レビュー 感想 ★★★★★

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「戦後処理で負けた日本は、本当に負けた」

永瀬さんの言葉が、胸に突き刺さりました。

この映画は、日本社会の重大な欠点を

暴いた映画だと思いました。

 

第二次大戦で日本軍に捕らえられた捕虜の多くが、

悲惨な末路を辿った。

それについてイギリス人の元捕虜が、

日本を絶対許さないと怒っている。

 

このような話を聞くと多くの日本人は心の奥底で、

こう思うのではないでしょうか。

“戦争をしていたのだから、仕方ない”と。

“ 殺し合いをしていたのだから”と。

私はそうでした。

それは、そのまま日本政府の姿勢であり、

日本は戦時中の捕虜について、

明確な謝罪や、補償を避けてきた。

でも、平和国家として世界をリードするならば、

その姿勢は正しいのか?

膨大なODAなどを投じる体力があるなら、

謝罪も補償も、可能だったのではないか?

 
では、何故しなかったのか?

その答えを、この映画は分かりやすく突き付ける。

実は、日本の社会では「人の命は軽い」のだと。

戦時中の日本人にとって、敵の捕虜になることは、

生き恥だった。

国も、社会も、玉砕を推奨し、礼賛した。

だから「戦争だから仕方ない」となる。

でも、イギリスでもオーストラリアでもタイでも、

人の命は、日本ほど軽くはなかったのだ。

味方はもちろん、敵であっても。

多くの捕虜の命を奪った泰緬鉄道の建設。

生き埋めにされた人もいたと言う。

今世紀に入っても、掘り起こされ続ける捕虜の人骨。

ナチスホロコーストと、何が違うのか。

タイの寺に積み上げられた、しゃれこうべは、

クメール・ルージュの大量虐殺と何が違うのか?

“戦争のことだから…”と言うなら、

戦後なぜ謝らないのか?

遺骨の供養までタイ任せになっている現実を、

どれほどの日本人が知っているのか?

 

日本の民主主義は、革命などの闘いによって

勝ち取ったものではない。

日本は西欧列強の圧力を受けて民主化し、

恐怖を原動力に、富国強兵に突き進んだ。

そんな日本の現代史において、

第二次大戦での敗戦は、国の在り方を再考し、

決めていく最大の機会でもあったはずだ。

そこで、人間の尊厳を回復させるような、

戦後処理を果たせなかったとしたら、

日本はいつ、“人権”という哲学を勝ち取り、

理念として確立できるのか。

 

脇目も振らず、経済建設に邁進し、

その成功が、他の全てを覆い隠した結果、

ワーカホリックな国、

自殺率が高い国になってしまったのではないか?

日本人としての立ち位置が、グラグラと

揺らぐ思いがした映画でした。