最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

PK 評価 感想 レビュー ★★★★★★

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「むずかしいことをやさしく、

   やさしいことをふかく、

   ふかいことをおもしろく」

 

井上ひさしさんのこの言葉が、

全ての表現、作品、とりわけ

エンターテイメント作品に通じる背景には、

「本当のことを言わないのが大人」という

世界に共通するルールがあると思う。

皆が社会のルールを受け入れた風になり、

何が事実かということより、

その状況で、どう振る舞う方が得で、

社会に適合できるかを考えるようになる。

 

何が事実かは置き去りにされ、

人を困らせてまで、本当のことを言うことは、

もはや、PK=酔っ払いの特権となってしまうのだ。

だから、大人の嘘をわかりやすく指摘することは、

笑いの源泉であり、

それ自体がエンターテイメントだ。

 

誰もが分かるかたちで、

社会の大嘘を暴くこの映画は、

極上のエンターテイメントです!

 

撮影も、シナリオも一級品。

主演女優の、アヌシュカ・シャルマさん、

PKを演じたアーミル・カーンさんの輝きには、

圧倒されます。

150分があっという間で、メジャーリーグ

トップ争いしている作品だと思いました。

 

さんざん笑った後に、 

「神はただ信じるもので、

   人が神を守ろうとするから間違いが起こる」

という言葉を聞いた時には、

今度は、涙を抑えることができませんでした。

 

本当におすすめの、

ド級のエンターテイメント大作です。

実はまだラージクマール・ヒラニ監督の

代表作『きっと、うまくいく』を見てないので、

ビデオの日に借りる作品が決まりました!

湯を沸かすほどの熱い愛 評価 レビュー 感想 ★★★★★★

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だいぶ泣かされました。

何度か嗚咽が込み上げそうになりましたが、

近くのおばさんが、その度にかなり先行して、

嗚咽をあげてくれたおかげで、我に返り、

大人しく見続けることができたと思います。

それでも2回ほど突然きた時は、堪えるために、

ウッと短い呻き声を上げてしまいましたが…

満席に近く、横に座る、

見知らぬ人の震えが伝わってきました。

こういう劇場体験は、なかなかできないものです。

 

今年の邦画は

『淵に立つ』にしても『永い言い訳』にしても、

「家族のカタチ」を描いたものが多いですね。

社会の最小基盤である家族でさえ、

今ではすっかり正解が無くなってしまった

時代だからなのだと思います。

 

自分も家族がいるので、

家族というものが、如何に脆い関係性の中にいるか、

身に染みてわかっているつもりです。

分かっていても、

人はそんなに簡単に器用になったり、

賢くなったり、優しくなれないことも。

 

あくまで、そんな私の場合ですが、

映画で観たいのは、やはり、

『淵に立つ』まで追い詰められる家族ではなく、

『湯を沸かすほどの熱い愛』が包む家族の姿でした。

奇遇にも、双方の作品で、

赤色が「熱」の象徴として出てきますが、

やはり、人の発する熱は、最終的には

人を前に向かせる力になると、肯定したいのです。

 

ストーリーは、優しい伏線が幾重にも重ねられ、

深刻さの後には、必ず優しい笑いが付いてきます。

これらの積み重ねが、人生や、家族における

「愛しさ」とは何だったか思い出させてくれます。

 

宮沢りえさんの、

これまでの人生経験全てを懸けたかのような、

心に響く演技。

ダメさで、愛しくさせてしまう、

オダギリジョーさんの存在。

全身で真っ直ぐさを体現した杉咲花さん。

編集のテンポも絶妙で、

演技の余韻が、程よく沁みます。

 

それらが生み出したこの映画は、

愛しい人の死を体験させてくれます。

だから、どうしても泣けます。

そして、それを映画で知ることは、

とてつもなく幸せなことだと、私は思うのです。

 

主題歌もよかった!

エンドロールの最後まで、疾走し切った映画でした。

TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド) 評価 レビュー 感想 ★★★★

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「うまい」ことの崇高さを感じた映画。

本当に「うまい魚」を食べられた場合、

それが、どれだけ奇跡的な仕事の

連続だったことか…

 

まず、魚が獲れなければいけない。

獲れた魚の中で、今この瞬間は

どこの、何がうまいのか?

知らなければいけない。

良い魚を競り落とさなければならない。

競り落とした魚の中から、

さらに目利きで、よりうまい魚を

選ばなければならない。

職人技により、うまく絞めなければならない。

よい魚が、よい料理人に渡らなければならない。

うまく捌いて、調理しなければならない。

その瞬間に、

客として居合わせなければならない…

たから、本当にうまい魚は、

お高いのだと思いました笑。

 

また築地が「ワンダーランド」で

あることについては、

合理化・効率化全盛の今、

築地市場という囲われた空間だけに、

昔ながらの商売、コミュニティが

残っていたことだと思いました。

 

自然の恵みである魚の状況は日々変化し、

情報が命。

競りという、厳しい勝負の世界でもあり、

毎日魚を触る人にしか分からない

高度な魚の見極めがある。

かつ、食を扱うので、先代や

先先代からの「仲間」「信頼」が

モノをいう空間。

合理化や効率化が馴染まないものの

オンパレードな「特別」な場所だから、

奇跡的に、昔ながらの商売、

コミュニティが残存していて、

今の時代には、もはや

「ワンダーランド」と呼ぶに相応しい

場所になってしまったのだと。 

その奇跡の空間は、

日本が世界に誇るべき「食文化」を今に伝える

象徴だと思いました。

 

惜しむらくは海外ドキュメンタリーのように、

全編インタビュー構成になっていて、

何気ないけど面白そうなやりとりが、

たくさん撮れているのに、音が半オフ扱い。

劇場の音響の問題もあるかもしれませんが、

しっかりとは入ってきませんでした。

問屋、仲卸、料理人でそれぞれ主役決めて

一年かけて密着し、

インタビュー要らないくらいシーンで語る

日本のドキュメンタリーとしてつくってもらい、

世界に向けて築地を発信してもらえたら、

もっと嬉しかったし、

きっと奇跡の感動作が生まれていたのではと。

 

でも、なかなか撮影させない築地市場ですから、

主役決めない、インタビュー構成が

精一杯だったような気もします。

築地市場も移転を前にやはり、

歴史的空間を記録に残すべきだと考え、

全体的な取材としてOKしたのではないでしょうか。

 

それでもこの映画は、

日本人なら誰でも学ぶべき、食の記録。

DVD化されれば教科書的な価値があると思います。

映画としては、もしかしたら

海外の方が評価高いかもしれませんが。

日本人なら誰でも学ぶべき食の記録です。

 

なお東京都の市場長のインタビューが

かなり、たくさん出てきますが、

公開される時に、まさかこのような

事態になっているとは、

思いもよらなかったでしょう・・ 

【レンタル】海街diary 評価 感想 レビュー ★★★★

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今年は見る邦画がみな後悔しないものばかり。

これまであまりに見ていなかったので、

今年が豊作なのか、これまでも充実していたのか?

分からない!ということで、

タイトルだけは聞いていた話題作を今さら鑑賞。

個人的に“邦画祭り”になっています。

 

本作は、最初のお父さんの葬式の一連で、

既にグッときてしまい、

以降、4人の女性が織りなすストーリーに、

グイグイと引き込まれていきました。

自分に娘ができてから、この手の話に弱い、

いうのもありますが、

登場人物を、そっと優しく見守るような視点。

家族に起こることを、訥々と描く姿勢。

突然、突拍子のないことは起こらないという安心感。

だから、細かな心情描写に感情移入しやすい。

これは、何処かで見たことあるような感じ……

あっ『秋刀魚の味』だ!『東京物語』だ!と

思いました。

 

そこから、この映画は、

“今をときめく女優さんの魅力をフル活用して、

現代に小津安二郎の世界を蘇らせようとした作品”

と勝手に定義し、勝手に比較して見てました。

 

古民家の居間。

庭があって、縁側があって、卓袱台あって。

朝食のシーンが何回かあって。夜酒盛りしてたり。

居間を中心に、四姉妹の暮らし、

積み重ねていく時間を丁寧に描いているのが、

小津作品を思い浮かべた、最大のポイントでした。

家に帰ってきた!という時の玄関の描き方も、

それぞれ印象的で、同質のシーンな気がしました。

 

女優の魅力をフル活用…は、

長澤まさみさんの美脚を舐めるようにドリーしていく

ファーストカットや、

広瀬すずさんの魅力の描き方の執念深さ。

全編通して美しいものを、美しいものとして

描きたいという、執念を感じました。

逆に綾瀬はるかさんは、終始抑制的で、地味。

あれだけ地味な演出でも耐えられる所が、

凄味かもしれませんが。

ストーリー中、伏線をはったものの、

結末があっさりしているものがいくつかあり、

勝手な想像ですが、

実景や、女優さんの美しさの表現に尺を割き、

落としたシーンも大分あるのではないかと…

だとすれば、個人的には非常に共感できる部分で、

是枝監督の出自がドキュメンタリーだったこととも

無関係ではないと思います。

 

もちろん小津映画とは違う部分もあり、

小津映画ならFIXのカットが

微妙に動いていたりして、現代風。

重要なモチーフとなる「食」は、

梅酒や、しらすは小津映画ぽい(笑)

気がしますが、

アジフライやカレー、ポテトサラダなんかは、今風の「和」かと。

 

勝手な小津映画との比較で、さらに言うと、

惜しむらくは、キレがやや欠けたかなと思いました。

生活の中にある、ある種の「毒」みたいなもの。

母が、いきなり自宅の売却を切り出すとか、

うるさ型のおばあさんとか、

提示されてはいたのですが、

もう少し、日常の厄介ごとに、

ピンと張り詰めたような緊張感があると、

より味わいがあったかと。

でも個人的に、こういう優しい映画、大好きです。

順番逆ですが、最近見た邦画が

刺激的な「毒」のオンパレードだったので、特に。

【レンタル】桐島、部活やめるってよ 評価 感想 レビュー ★★★

 

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『何者』が思いの外、よかったので、

実はまだ見てなかった、朝井リョウ原作の本作を

早速レンタル。

瑞々しい言葉のやりとりから滲み出る

独特の緊張感は、監督が違えど『何者』と共通。

何気ない会話の間に、実は起こっている

それぞれの感情の起伏を捉え、

ドラマにまで引き上げて表現するのが、

朝井小説の真骨頂なのだろう。

 

その意味では『何者』で登場する、

人を分析するのが得意な脚本家の拓人は、

朝井さんの分身であり、

ツイッターのエピソードは、

原体験そのものなのではないか…

なんて言いながら、まだ著作にあたれてません笑。

 

若くして作家になったから、

若い人の言葉の種が豊富で、映像化しやすい。

余計な言い回しが無いから、役者も乗っかりやすい。

結果、あっという間にストーリーに引き込まれる。

「進路」という言葉が重みを増す高校2年。

これまで夢中になってやってきたことの

自分の実力が、ある程度見えてしまっている。

それでも、自分を信じ、

無我夢中でやり切って、敗れた方が、

実は、次には進みやすい。

でも、できる子ほど、敗れる前に、

自分で自分の判断を下そうとするから、

しんどくなる。

あの頃は、あの頃なりに

真剣に悩んでいたことが生々しく蘇ってくる。

 

同じ日を異なる目線で見せる手法が成功しているが、

そんなに簡単な作業ではなかったと思う。

 

松岡茉優さんは…ほんとに若くして職人!

東出昌大さんの役柄は、セリフが非常に少ないが、

表情だけで映画のテーマを紡ぎ出している。

やはり、顔のパーツが大きい役者さんは、

得だと思ってしまった!

【レンタル】戦場にかける橋 評価 感想 レビュー ★★★★

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クワイ河に虹をかけた男』を見て、
幼い頃にテレビで見たこの作品をレンタル。
「サル、ゴリラ、チンパンジー♪」と歌っていた
クワイ河マーチ』の記憶しかなかったのですが、
今回『クワイ河に虹をかけた男』を観たことで、
凄惨な背景をイメージしながら鑑賞できました。

日本人の大佐は収容所で、イギリス人捕虜に対し、
死を恐れない「誇りと恥」を説き、
生き恥を晒した”と捕虜を見下すのに対し、
イギリス人大佐は捕虜となっても
「法と主義」の下で生きることを宣言し、
“非文明的な”日本のやり方に決して屈しません。

それは日本人の考え方の根拠が、
“お上”に従うことを第一とするのに対し、
イギリス人は“人間の尊厳”を判断基準にする、
という対比に見えます。

そこに、軍人ではない医師の現実主義や、
アメリカ人捕虜の個人主義的な視点が重ねられ、
重厚かつ、エンターテインメントとして、
楽しめる作品に仕上がっています。

「人間の尊厳」を説くイギリス人大佐も、
絶望的な状況の中、
日本を利する橋の建設であっても、
それに没頭することでしか、自らの信念を
維持できなかったことも示されます。
物語の結末には、強い反戦のメッセージを
読み取ることができます。


米英合作で制作され、
1957年に英米日で公開されたこの映画は、
アングロサクソンの真の強さが、
戦争で勝つこと以上に、戦争の極限状況の中でも、
人間の尊厳を守ろうとすることにあると
雄弁に主張しています。

それは『クワイ河に虹をかけた男』の永瀬さんが
「戦後処理で負けた日本は、本当に負けた」と
語ったのと、表裏の関係にあるテーマです。

米英が終戦からわずか10年余りで、
このテーマを、一流の娯楽作品として公開し、
同時に日本でも上映したことを考えると、
プロパガンダ的な意味合いも感じますが、
やはり彼我の「国力」の差は歴然としていて、
先の大戦が如何に無謀だったか思い知らされます。

戦後70年が経過した今、
日本は普遍的な人間主義を掲げる国として、
どこまで成熟できたのだろうか…
もっとも、今のアメリカやイギリスでは、
この映画を作った頃のような懐の深さが
失われつつあるのかもしれませんが。

何者 評価 感想 レビュー ★★★★

 

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予告編を見て、全然ピンときてなかったんですが、

レビュー読んで観たくなり、行って来ました。

映画館では高校生くらいの若い客の姿が目立ちました。

感想としては……

素晴らしかった‼︎ 

エンドロール、テーマ曲に煽られて広がる余韻は

ほろ苦いけど、甘さも残り、爽快でもありました。

 

40歳を越えた自分は最初、“就活”の話でしょと、

自分が、とうの昔に通り過ぎた通過儀礼の話と、

油断しながら見始めました。

最近の若い人の会話の仕方って、

こんな感じなんだろうな…

雰囲気がよく伝わってくるな…

なんて思いながら観ていたのですが、

話が転がり始めると、

今の自分に、グサグサと刺さってきます。

「何者」というテーマを表現するのに、

就活が、恐ろしく分かりやすいだけで、

そのテーマ自体は、一生続く、

普遍的なものだからです。

 

ぜひ劇場で観て欲しいのでネタバレは避けますが、

運良く志望通り就職した人も、

不本意な形で就職した人も、

独立した人でも、

仕事を辞めて主婦になった人も、

誰もがみな、

この『何者』というテーマからは逃げられない。

最終学年に頑張った「就活」ぐらいでは、

到底答えが出るテーマではないのです。

ただ、それを最初に、否応なしに

突きつけられるのが「就活」というだけで…

 

20代の彼らは、

「何者になれるか?」と考えますが、

私のように40代に入ると、

自他共に認めるような「何者」にも

なれないかもしれないけど、

それでも存在し続ける自分とは「何者なのか?」って

考え出す問題かなと。

そういう意味では、大人が観た方が、

味わい深い映画かもしれないと思いました。

 

映像的には、まだ近くにいるのに

すごく遠くに行ってしまった感じがする、

閉所での、奥行きあるロングの撮り方が印象的でした。

劇中劇の使い方は、よく練られていて斬新。

でも尺が短い予告編で使うと逆効果な気がして、

使わなければよかったのに…と思いました。

 

未読の原作のパワーを感じ、

それを表現仕切った監督と、

役者陣の素晴らしさを感じました。

菅田将暉さん、今なぜ旬なのか、

少し分かった気がしました。

あの不安定な感じが、くすぐるんですね。

二階堂ふみさん、相変わらず

一度見てしまったら、

他の女優さんの起用が全く想像できないぐらい

役をモノにしています。

 

時間作って、原作にあたってみたいです。

おすすめです!