最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

弁護人 評価 感想 レビュー ★★★★

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 大手建設会社のトップが、

ソン・ガンホさん演じるソン・ウソク弁護士に対し

「今の韓国が真の民主主義を求めるのはまだ早い。

もっと中産階級が育つのを待たなければ」

と諭したのに対し、

ソン弁護士は

「私はカネの問題だとは思わない」と拒絶し

独裁体制と闘う決意を新たにする

シーンが最も印象的でした。

 

今の時代を生きている大人の責務は、

今、起きている問題を解決するために動き、

次世代になるべく先送りしないことだと、

明確に示したからです。

 

実際に、もしカネの問題なら、

いま中国は徐々に民主化に向かっているのか?

かつて民主化運動が弾圧され、

その後に、新たな闘いが続かなければ、

GDPで日本を抜いても、一党独裁は揺るぎません。

格差があるからとか、いろいろ言い訳できても、

結局は勝ち取らない限り、民主化しないのです。

 

今、解決することが難しい問題は山ほどあります。

今、解決に動いたら、何かがクラッシュする。

何らかの危機が起こる。または抹殺される…

恐ろしいことなのですが、

それらの問題のほとんどは先送りしても、

自然治癒してくれません。

 

ただ今の痛みや動揺、恐怖を避け、

言い訳をし、

次世代の痛みや恐怖に対しては、

目をつぶっているのと同じです。

 

結局、いつか、誰かが、その責任感から

クラッシュさせなければならないのです。

そして基本的には、先送りすればするほど、

クラッシュの衝撃は大きくなると思います。

 

その点、減刑ではなく、

あくまで有罪・無罪を争った

ソン・ウソク弁護士の次世代に対する

責任感は素晴らしいと思いました。

後に大統領になったノ・ムヒョン氏を

モデルにした話と鑑賞後に知り、

なるほど!と思いました。

 

朴大統領の問題で韓国が揺れている今観るのが、

イムリーだと思って見ましたが、

皮肉にも、鑑賞後まず思い浮かべたのは、

一向に解決に向けた動きが皆無な

日本の財政問題でした…

 

映画は、シナリオがやや緩くて、

消化不良なシーンも所々ありましたが、

真っ直ぐ過ぎるメッセージ性と

ソン・ガンホさんの熱演が印象に残る

良作だったと思います!

この世界の片隅に 評価 感想 レビュー ★★★★★★

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心が震えました。

 

人の居場所をつくれるのは、人だけ。

他人と、自分でつくるもの。

 

だから、人の居場所を奪うのも、人だけ…

 

空襲警報か鳴り止まない中でも

慎ましく生きている人の暮らしを知っていたら、

上空から爆弾を浴びせることができるだろうか。

 

焼け野原となってしまった町を見ていたら、

ラジオの向こうから、頑張ってください、と

呼びかけることができるだろうか。

 

居場所を奪う側の人たちの顔は、常に見えません。

 

最愛の人を次々に亡くしてしまった人は、

どこに行けば、生き続けることができるのか。

 

それでもこの映画は、

人の想像力の可能性を信じています。

 

悲惨な状況の人に、

なぜ周りの人は皆「よかったね」と言うのか?

 

人にはきっと

この世界の片隅にいる人のことを想像し、

関心を寄せる力があると。

 

そして他者に関心を寄せることこそ、

人の創造性なのだと、

静かに主張しています。

 

もう一回、観に行きたいです。

今度は小学生の娘を連れて。

【レンタル】きっと、うまくいく 評価 感想 レビュー ★★★★

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ラージクマール・ヒラニ監督&アーミル・カーン

『PK』に感銘を受けてレンタル。

仕事が忙しく、一度見ずに返却してしまい…

再レンタルして、ようやく鑑賞しました。

 

テーマとしては『いまを生きる』を

思い起こすような感じでしょうか。

ただインド風?のカラッとした

演出&映像なので、

「死せる詩人の会」が象徴するような、

陰鬱な息苦しさは皆無です。

で、いきなり自殺したりするので、

びっくりしてしまう所もあるのですが、

それだけ強いプレッシャーがあるんだな、

と納得すれば、ストーリーに入っていけます。

 

今作のテーマは、未来でもなく、過去でもなく、

親でもなく、面子でもなく、

自分自身として今を生きる「勇気」の大切さ。 

そして、友情の美しさ。

このテーマ自体は、古今東西の映画で描かれる

ど真ん中のテーマであって、目新しさはない。

にも関わらず、この映画が高く評価されたのは、

制作陣が、映画の力を信じて

作っていることに尽きると思う。

大衆娯楽の頂点として、

多くの人を楽しませて、

生きる勇気を与える作品を作るという信念。

邪念がなく、

それしか考えずに作っていることが伝わるから、

作品自体のテーマである「勇気」の大切さが、

観ている方が恥ずかしくなるぐらい、

真っ直ぐに伝わってくる。

その真っ直ぐさが人の心を動かすのだと思います。

 

音楽も最高!

明日の活力として、映画を楽しみたい人に

オススメの作品です! 

因みに『PK』をこれから観る予定の方で、

今作まだの方がいらっしゃれば、

先にこちらを見た方が良いかも!

【レンタル】紙の月 評価 感想 レビュー ★★★★

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そこはかとなく、怖い映画だと思いました。

心のエアポケットを突くような恐怖。

魔がさす、と言うか。

銀行の人によく聞く「ありがちな話」が、

行く所まで行くとこうなる、というのが、

極めてリアルに描かれていました。

映画全体の色調も暗めで、恐怖を掻き立てます。

THE.日本映画!という感じ。

 

常に見る順番が逆ですが、

『湯を沸かすほどの熱い愛』で

宮沢りえさんの演技が気になり鑑賞しました。

真逆の役柄…綺麗で、おとなしめで、透明感あって

基本的には「悪いことしなそう」なタイプだけど、

穿った見方をすると、あり得なくはない…

凄くハマリ役だと思いました。

池松壮亮さんも、ほぼ同様な理由でハマってました。

 

印象に残ったシーンは、自転車の並走カットと、

ラストの走るカット。

自由で、躍動感があるようにも見えるけど、

ケージの中で、ハムスターが回し車の上を、

走っているのを見て勝手に、

「嬉々として走っている」と思うのと、

似ているような気もしました。

ただ、最後の「走った」方は、

明らかにケージの外へ逃げ出していましたが。

 

宮沢りえさんと、小林聡美さんの、

「どっちが惨めか」論争が、心に響きました。

冒頭の腕時計のくだりを思い浮かべながら、

「結婚=従属」という構図に苦しむ

女性の思いを想像するよいきっかけとなりました。

 

早く配偶者控除を見直した方がよいと思いましたが、

なかなかそうは、ならなそうですね。

PK 評価 感想 レビュー ★★★★★★

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「むずかしいことをやさしく、

   やさしいことをふかく、

   ふかいことをおもしろく」

 

井上ひさしさんのこの言葉が、

全ての表現、作品、とりわけ

エンターテイメント作品に通じる背景には、

「本当のことを言わないのが大人」という

世界に共通するルールがあると思う。

皆が社会のルールを受け入れた風になり、

何が事実かということより、

その状況で、どう振る舞う方が得で、

社会に適合できるかを考えるようになる。

 

何が事実かは置き去りにされ、

人を困らせてまで、本当のことを言うことは、

もはや、PK=酔っ払いの特権となってしまうのだ。

だから、大人の嘘をわかりやすく指摘することは、

笑いの源泉であり、

それ自体がエンターテイメントだ。

 

誰もが分かるかたちで、

社会の大嘘を暴くこの映画は、

極上のエンターテイメントです!

 

撮影も、シナリオも一級品。

主演女優の、アヌシュカ・シャルマさん、

PKを演じたアーミル・カーンさんの輝きには、

圧倒されます。

150分があっという間で、メジャーリーグ

トップ争いしている作品だと思いました。

 

さんざん笑った後に、 

「神はただ信じるもので、

   人が神を守ろうとするから間違いが起こる」

という言葉を聞いた時には、

今度は、涙を抑えることができませんでした。

 

本当におすすめの、

ド級のエンターテイメント大作です。

実はまだラージクマール・ヒラニ監督の

代表作『きっと、うまくいく』を見てないので、

ビデオの日に借りる作品が決まりました!

湯を沸かすほどの熱い愛 評価 レビュー 感想 ★★★★★★

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だいぶ泣かされました。

何度か嗚咽が込み上げそうになりましたが、

近くのおばさんが、その度にかなり先行して、

嗚咽をあげてくれたおかげで、我に返り、

大人しく見続けることができたと思います。

それでも2回ほど突然きた時は、堪えるために、

ウッと短い呻き声を上げてしまいましたが…

満席に近く、横に座る、

見知らぬ人の震えが伝わってきました。

こういう劇場体験は、なかなかできないものです。

 

今年の邦画は

『淵に立つ』にしても『永い言い訳』にしても、

「家族のカタチ」を描いたものが多いですね。

社会の最小基盤である家族でさえ、

今ではすっかり正解が無くなってしまった

時代だからなのだと思います。

 

自分も家族がいるので、

家族というものが、如何に脆い関係性の中にいるか、

身に染みてわかっているつもりです。

分かっていても、

人はそんなに簡単に器用になったり、

賢くなったり、優しくなれないことも。

 

あくまで、そんな私の場合ですが、

映画で観たいのは、やはり、

『淵に立つ』まで追い詰められる家族ではなく、

『湯を沸かすほどの熱い愛』が包む家族の姿でした。

奇遇にも、双方の作品で、

赤色が「熱」の象徴として出てきますが、

やはり、人の発する熱は、最終的には

人を前に向かせる力になると、肯定したいのです。

 

ストーリーは、優しい伏線が幾重にも重ねられ、

深刻さの後には、必ず優しい笑いが付いてきます。

これらの積み重ねが、人生や、家族における

「愛しさ」とは何だったか思い出させてくれます。

 

宮沢りえさんの、

これまでの人生経験全てを懸けたかのような、

心に響く演技。

ダメさで、愛しくさせてしまう、

オダギリジョーさんの存在。

全身で真っ直ぐさを体現した杉咲花さん。

編集のテンポも絶妙で、

演技の余韻が、程よく沁みます。

 

それらが生み出したこの映画は、

愛しい人の死を体験させてくれます。

だから、どうしても泣けます。

そして、それを映画で知ることは、

とてつもなく幸せなことだと、私は思うのです。

 

主題歌もよかった!

エンドロールの最後まで、疾走し切った映画でした。

TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド) 評価 レビュー 感想 ★★★★

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「うまい」ことの崇高さを感じた映画。

本当に「うまい魚」を食べられた場合、

それが、どれだけ奇跡的な仕事の

連続だったことか…

 

まず、魚が獲れなければいけない。

獲れた魚の中で、今この瞬間は

どこの、何がうまいのか?

知らなければいけない。

良い魚を競り落とさなければならない。

競り落とした魚の中から、

さらに目利きで、よりうまい魚を

選ばなければならない。

職人技により、うまく絞めなければならない。

よい魚が、よい料理人に渡らなければならない。

うまく捌いて、調理しなければならない。

その瞬間に、

客として居合わせなければならない…

たから、本当にうまい魚は、

お高いのだと思いました笑。

 

また築地が「ワンダーランド」で

あることについては、

合理化・効率化全盛の今、

築地市場という囲われた空間だけに、

昔ながらの商売、コミュニティが

残っていたことだと思いました。

 

自然の恵みである魚の状況は日々変化し、

情報が命。

競りという、厳しい勝負の世界でもあり、

毎日魚を触る人にしか分からない

高度な魚の見極めがある。

かつ、食を扱うので、先代や

先先代からの「仲間」「信頼」が

モノをいう空間。

合理化や効率化が馴染まないものの

オンパレードな「特別」な場所だから、

奇跡的に、昔ながらの商売、

コミュニティが残存していて、

今の時代には、もはや

「ワンダーランド」と呼ぶに相応しい

場所になってしまったのだと。 

その奇跡の空間は、

日本が世界に誇るべき「食文化」を今に伝える

象徴だと思いました。

 

惜しむらくは海外ドキュメンタリーのように、

全編インタビュー構成になっていて、

何気ないけど面白そうなやりとりが、

たくさん撮れているのに、音が半オフ扱い。

劇場の音響の問題もあるかもしれませんが、

しっかりとは入ってきませんでした。

問屋、仲卸、料理人でそれぞれ主役決めて

一年かけて密着し、

インタビュー要らないくらいシーンで語る

日本のドキュメンタリーとしてつくってもらい、

世界に向けて築地を発信してもらえたら、

もっと嬉しかったし、

きっと奇跡の感動作が生まれていたのではと。

 

でも、なかなか撮影させない築地市場ですから、

主役決めない、インタビュー構成が

精一杯だったような気もします。

築地市場も移転を前にやはり、

歴史的空間を記録に残すべきだと考え、

全体的な取材としてOKしたのではないでしょうか。

 

それでもこの映画は、

日本人なら誰でも学ぶべき、食の記録。

DVD化されれば教科書的な価値があると思います。

映画としては、もしかしたら

海外の方が評価高いかもしれませんが。

日本人なら誰でも学ぶべき食の記録です。

 

なお東京都の市場長のインタビューが

かなり、たくさん出てきますが、

公開される時に、まさかこのような

事態になっているとは、

思いもよらなかったでしょう・・