最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

ポバティ–・インク あなたの寄付の不都合な真実 評価 レビュー 感想★★★★★

f:id:gyaro311:20160901102255j:image
この映画は今の「経済」は、どういうカタチをしているのか、見る人に突き付ける傑作だと思う。
「経済」において主役となるのは常に、カネや、モノや、人を動かす側なのだ。
例えそれが、人々の善意によるカネや、無償の援助物資であっても、主役はあくまでモノを出す側。
その構図は、基本的には重商主義と変わらない、ということをこの映画は明示している。

グローバル化の深まりによって、大量のモノやカネが移動すると、時に、ある地域に強烈な副作用をもたらす。
地域の中だけで成り立っていた、経済や文化を、いとも簡単に破壊してしまう。
モノやカネを動かす側に回らない限り、経済の主役にはなれない。自立できない。
つまり援助を受けている国は、一刻も早く、援助を受けている状態から抜け出さないと、危険なのだ。

この映画が問題解決のためのヒントとして提示するのは「貧しい国」の中小企業、新興企業が市場にアクセスできるようにすること。

彼らに貿易の扉を開くこと。

その通りだと思う。
でも凄く難しいと思う。

「貧しい国」の中にも、既得権益層がいて、腐敗がある。
グローバルな世の中で、既得権益層は、経済大国や、グローバル企業と結びついている。
仮にこれらの既得権益層や、大企業を抑制するルールづくりに成功しても、
資本主義、自由競争を原則にした舞台が整えられる中で、新たな挑戦者が育つ余地はどれくらいあるのだろうか?

このままでは、革命…テロの時代が確実に進行していくと思った。

では、翻って考えると、先の戦争で焼け野原となり、被占領国となった日本で、
多くの企業が雨後の筍のように登場し、高度成長を遂げ、経済の主役側になれたのは何故だったのか?

ここについても、この映画はヒントを示していた。
日本を占領したアメリカが、世界の覇権を獲得するために、大きく動いていたことが、プラスに働いたのだと。

ヨーロッパでは、大戦被災国に対する大規模な復興支援であるマーシャルプラン。
日本でも財閥を解体し、基本的には自由な競争する方針を打ち出した。

それら「効果ある」復興支援の背景にあったのは、ソ連を筆頭とする共産主義圏との冷戦。
言い換えれば「既得権益」に挑戦する共産主義革命に対抗するため、
戦争の敵国であっても、既得権益圏を維持することを優先したとも言える。

豊かさ=アメリカ的価値観という思想を植え付け、敵に回らないようにした上で、
アジアでいち早く、日本を経済的に自立させることが、アメリカの国益だったのだ。

そういう主役側、既得権益側の都合なしに、他国に貢献することはあり得るのか?

世界は、カネやモノを「援助」することで、結果的に貧富を固定化してしまう時代を超えて、
人や地域、異なる文化を育むことに「貢献する」システムを構築できるのだろうか?

人類の叡智が問われている…

と感じてしまいました。・・・凄い映画です。