好きとは言いたくないけれど、評価してしまう、という日本映画の典型です。
まず暗いです。老人を描く映画は世界中にあるけれど、ダントツに暗い方かと。
世界では多分、元気な老人の映画の方が評価されるし、実際おもしろいし。
尊厳死を扱った映画も世界に多くあるけれど、ここまで暗くない。
そして、もう少し美しく描く。
一方で、この映画はドキュメンタリー並みにリアル。そこが凄い。
登場人物の設定、演技、撮影、録音、どれも凄くレベル高くて、リアルです。
ドキュメンタリーとの違いで言えば、
特に録音と、ミキシング、音効、音楽の作り込みが凄くて、
リアルな描写にドラマとしての重厚さを与えていたと思います。
ストーリーは切実で、リアルで、考えさせられるものでした。
一方で、やはり日本の仏教的な、人生は苦、老いは苦、死ぬことで解放、
みたいな死生観を映画で見ることは、あんまり愉快ではないと感じてしまいます。
個人的には、死ぬことを問うより、生きることを問うストーリーを
映画には語って欲しいと思ってしまいます。
あと、この映画は、日本の貧しさを再認識する映画でもあります。
成長至上主義になる必要はないと思うけど、
どうやったら楽しく豊かに生きられるのか?考えていきたいなと、改めて思いました。
そこまでリアルに考えさせられたわけなので、
この映画に大きく影響されたことは間違いない気がします。
そういう意味では、きっと良い映画だし、もしカンヌで評価されたとしても
本来は日本人こそ直視すべき映画なのかもしれません。