最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

クワイ河に虹をかけた男 評価 レビュー 感想 ★★★★★

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「戦後処理で負けた日本は、本当に負けた」

永瀬さんの言葉が、胸に突き刺さりました。

この映画は、日本社会の重大な欠点を

暴いた映画だと思いました。

 

第二次大戦で日本軍に捕らえられた捕虜の多くが、

悲惨な末路を辿った。

それについてイギリス人の元捕虜が、

日本を絶対許さないと怒っている。

 

このような話を聞くと多くの日本人は心の奥底で、

こう思うのではないでしょうか。

“戦争をしていたのだから、仕方ない”と。

“ 殺し合いをしていたのだから”と。

私はそうでした。

それは、そのまま日本政府の姿勢であり、

日本は戦時中の捕虜について、

明確な謝罪や、補償を避けてきた。

でも、平和国家として世界をリードするならば、

その姿勢は正しいのか?

膨大なODAなどを投じる体力があるなら、

謝罪も補償も、可能だったのではないか?

 
では、何故しなかったのか?

その答えを、この映画は分かりやすく突き付ける。

実は、日本の社会では「人の命は軽い」のだと。

戦時中の日本人にとって、敵の捕虜になることは、

生き恥だった。

国も、社会も、玉砕を推奨し、礼賛した。

だから「戦争だから仕方ない」となる。

でも、イギリスでもオーストラリアでもタイでも、

人の命は、日本ほど軽くはなかったのだ。

味方はもちろん、敵であっても。

多くの捕虜の命を奪った泰緬鉄道の建設。

生き埋めにされた人もいたと言う。

今世紀に入っても、掘り起こされ続ける捕虜の人骨。

ナチスホロコーストと、何が違うのか。

タイの寺に積み上げられた、しゃれこうべは、

クメール・ルージュの大量虐殺と何が違うのか?

“戦争のことだから…”と言うなら、

戦後なぜ謝らないのか?

遺骨の供養までタイ任せになっている現実を、

どれほどの日本人が知っているのか?

 

日本の民主主義は、革命などの闘いによって

勝ち取ったものではない。

日本は西欧列強の圧力を受けて民主化し、

恐怖を原動力に、富国強兵に突き進んだ。

そんな日本の現代史において、

第二次大戦での敗戦は、国の在り方を再考し、

決めていく最大の機会でもあったはずだ。

そこで、人間の尊厳を回復させるような、

戦後処理を果たせなかったとしたら、

日本はいつ、“人権”という哲学を勝ち取り、

理念として確立できるのか。

 

脇目も振らず、経済建設に邁進し、

その成功が、他の全てを覆い隠した結果、

ワーカホリックな国、

自殺率が高い国になってしまったのではないか?

日本人としての立ち位置が、グラグラと

揺らぐ思いがした映画でした。