見ているのが、しんどかった。怖かった。
暗澹たる気持ちで、
まだ続くのか…と思いながら見ていた。
人の劣情を、容赦なく炙り出すこの映画は、
見ていて、常に息苦しく、目を背けたくなる。
最初はなんとなく今村昌平監督の『うなぎ』を
思い出しながら見ていたが、全くの別物だった。
『うなぎ』も、人の暗部を照らし出したが、
その中で人は「性」や「生」に執着していた。
登場人物は、不器用ながらも、生きようとしていた。
翻って、この作品が提示したのは絶望だと思う。
家族という最小単位の人間関係を否定し、
人の暗部以外の感情を映し出すことを、
徹頭徹尾、拒絶した。
重要なことについて何も説明しようとしなかった。
役者は素晴らしく、その難しい要求に応えたし、
それを実現するためには、緻密な構成だった。
ただ、説明されなければ、人は不安になり、
隔絶が絶望に行き着くのは、
当たり前のことだと思うのだ。
最後に唯一、表現された感情や、
「繋がり」による顛末には怒りすら覚えた。
人のある側面を、剥き出しにし、
観客を絶望のどん底に陥れたという意味では、
この映画はかつてないほど成功し、
ある種の「芸術性」を有したのかもしれないが、
私のキャパシティの範囲内では、
積極的に知覚したいような気づきは得られなかった。
むしろ、それは知ってるよ、と思ってしまった。
ここまで怒ってしまうという意味では、
それだけ感情が揺さぶられているわけで、
ある意味「凄い映画」なのだと思うし、
制作陣は独創的なセンスで、
それをやり切ったわけです。
でも、映画の芸術性って、もっと大きくて、
もっと包容力があるものだと信じたいのです。