読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

【レンタル】アメリカン・スナイパー 評価 レビュー 感想 ★★★★

f:id:gyaro311:20161010103526j:image

ハドソン川の奇跡』を見て、

見逃していたクリント・イーストウッド

この作品を思い出し、ようやく鑑賞。

イラク戦争を考える上で、

見なくてはならない映画だと思いました。

イラク戦争は、ブッシュ大統領の言動や、

テキサス州の知事を務めた経歴などから、

「カウボーイの戦争」などと呼ばれました。

主人公のカイルは、その言葉を見事に体現する人物。

元々テキサス州のカウボーイであり、

南部の典型のような父から

「羊でも、狼でもなく、番犬になれ」と

教えられます。

自分の安全や正義を、銃で守ることも叩きこまれます。

それは西部劇に出てくる「保安官」さながらであり、

ネイティブ・アメリカンを“蛮民”として排除しながら

西部を開拓していったアメリカの歴史を想起させます。

カイルは9.11でアメリカを危機に陥れた、

“蛮民を成敗”するためにイラクに向かいます。

強い信念があり、気持ちがブレないため、

狙撃手、スナイパーとしての実力を発揮。

いつしか「伝説」と呼ばれる存在になります。

ただし、武器を持たない人、

特に子供や女性を撃ちたくない、という

人間性は持ち合わせています。

そのカイルが、四回のイラク派遣を通じて、

人間性を破壊されていくのは何故なのか。

それが人と人が殺しあう戦争だからだ、

と言えば、その通りなのですが、

私は、この戦争が「終わらない戦争だった」

ことも大きいと思いました。

もし、この戦争に正義があるなら、道理があるなら、

おそらくカイルが四回も派遣されることはなかった。

なぜ犠牲者を増やすだけの

不毛な戦いが続いたのか?

なぜ「敵」は増えていくのか?

それはこの戦争自体に、道理がなかったから。

そして、戦場の兵士達には、そのことを

正確に認識する時間がなかったのだと思います。

だから、兵士達は戦場にいる時と

アメリカに戻った時の

戦争に対する認識のギャップに

心から傷付いたのではないでしょうか?

戦争が続けば続くほど敵が増える。

あれほど分かりやすかったはずの

「アメリカの正義」が少しずつ揺らいでいく。

それは、多くの「カウボーイ」たちにとって、

アイデンティティの崩壊とも言える

事態を招いたのではないでしょうか。

だからこの映画は「アメリカの正義」の終焉を

描いていると思います。

もはや帝国主義の時代にも、冷戦の時代にも、

後戻りはできないのです。

主人公のカイルは、アメリカの正義を「正しく」行い

そのために多くの人を狙撃しましたが、

その前提となる「アメリカの正義」自体が

敗北したのです。

 

なお、この映画の狙撃シーン、戦闘シーン、

ハマーの走行シーンなどは、

カットが非常に決まっていて、カッコよく見えるため、

「戦闘賛美」だという批判もあるようですが、

私はそうは思いませんでした。

よく伝わる、ハイクオリティの映像は、

あらゆる角度から人をストーリーに惹きつけます。

伝えるべきテーマを伝えるための技術であり投資です。

それを否定して、

もっと雑な映像を撮ってつなげと言うなら、

映画の進化はありません。

伝えるテーマを信じるならば、

後は堂々と、最上の手段で撮るべきです。

テーマが伝わるまで、

とことんつくればいいのだと思います。

シリア人スナイパーとの「決闘」のような描写も、

戦友の復讐を果たしたカイルが、

いよいよ戦争を続ける意義を失うことを

表現するために不可欠なシーンと見ました。

この映画は、アメリカの極上の映画技術と、

時に機能する自浄作用が生み出した

現代人が見るべき作品の一つだと

素直に思いました。