最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

怒り 評価 レビュー 感想 ★★★★

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 「怒り」というタイトルの群像劇ですが、
怒っている人ばかりが出てくる映画ではありませんでした!笑(過去にそういう邦画もありましたが)
その実、出てくるのは、皆、怒れない人ばかりです。
怒ることができれば、どれほど楽だろうか、
という人ばかりなのです。

痛みを知っているから、臆病になるんですね。
それが優しさ、なのでしょうが、
人を信じることに余りにも臆病になると、
犯罪者にもなってしまう、と。
人の痛みを知るがゆえに、人を信じたくなり、
裏切られた場合も然りです。

本作では出自不詳の三人の男性が、
それぞれの場所に出現。
その男性を迎え入れようとする
心優しい人たちの心理を描写します。
怒れる人たちばかりなら、到底成り立たない設定です。「そんなどこの馬の骨か分からない奴の相手するな!」で終わってしまう話だからです。

相手を信じられなければ普通は怒ります。
怒る目的は相手が行動を、こちらの目的に沿った方向に変えてくれると期待するから。
その前提にあるのは人に対する信頼。
人間関係に対する基本的な楽観です。
この映画は、怒れない人たちを描くことで、
人を信じ、怒れることが如何に幸せなことか。
その基盤は案外脆く、基盤が揺らいでしまうことの恐怖を描いていると思いました。

揺れ動く心理の描写がメインだから、必然的に顔のアップが多くなります。
俳優陣がそこにしっかり応えるから見応えがあります。
妻夫木さんの演技、素晴らしかったと思います。
森山さんも相変わらずの怪演。
綾野さんも、宮崎さんも成り切っていました。

広瀬さん、美しいです。

映像はリアルだけど新しい!
特に、時折挿入される真上からの正対の俯瞰にはハッとさせられます。映像が完全にイーブンで、感情の移入がなく、全てをはっきりさせてしまうから。
真上からの正対の俯瞰の効果で、人が如何にか弱く、孤独なものかと感じ、ハッとしてしまうのです。

様々な発見がある映画で、見終えて、エンドにタイトル出て、坂本龍一さんの荘厳な曲が流れて…
ああ、映画館で観て良かったぁ!となる所なんですが、、
「惜しい〜!」という心の声がリフレインします。

何故か。
主要な人間関係の一つについて、消化不良だったからです。
人間関係を描く時には、基本的にイーブンはあり得ず、必ずどちらかの目線となります。
そうしないと感情移入できないからです。

三つの主となる関係があり、
一つは、妻夫木さんvs綾野さん。これは目線もはっきりし、しっかり感情移入してしまいました。
もう一つの関係は、沖縄青年vs森山さん。
こちらは良い意味で意外でしたが、凄くうまく行っていたと思います。
そして最後の一つの関係、これは実は、渡辺謙さんvs宮崎さんだったのだと思います。
そして、、渡辺謙さんの目線に、思いになりきれなかった。最後の最後の涙の意味に迷ってしまった。
ここが「惜しい!」と、私が思ってしまった点です。あの最後の涙に、言葉いらずの共感があれば、
そこでこの映画が私の中で結実し、幸せなカタルシスの瞬間を迎えることができたと思うのです…
続きは原作で、、と思ってしまいました。
そこまでが狙いなら⁉︎それこそ「怒り」ですが。笑
でも、これだけ感想書きたくなってしまう、
重厚な映画だったのだと思います!
おすすめします。