最新映画見てきました!

最新映画を中心に感想を書いていきます。評価は★の数で!自分が満足しそうな映画を中心に見て、その中での相対的な評価ですので、基本的に★★★以上はおススメです!

スノーデン 評価 感想 レビュ★★★★

 

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きょうは、予約しないと、どこの映画館も

入れないほどの人気ぶり。

それも、普段は絶対に選ばない1列目とか、

2列目しか空席がありませんでした…

予約せずに映画館に来て、

打ちひしがれている人も

多く見受けられました。

 

で、映画の内容についてですが・・・

こういう人物のことを、

真に、英雄と言うのだろうと、

思いました。

 

歴史に残るものは、基本的には

勝者から見た歴史であり、

勝者に都合の良い歴史です。

その意味からすると、

スノーデンが未来において

歴史上の英雄として語られることは、

おそらく無いかと思います。

 

私自身もこの話を

ニュースでぼんやり見ていましたが、

国家機密を持ち出し、

全体主義のロシアに逃亡、、となると

何となく悪いイメージが湧きます。

(無知ゆえなのですが)

 

そして、スノーデン自身も、

暴露により、勝者として

歴史に名を残せるとは

思っていなかったと思います。

 

でも、告発せざるを得なかった。

安全保障のためなら、

個人のプライバシーを侵害してよい、

という感覚に、彼は全体主義の影を

見たのではないでしょうか。

 

そして、それを告発することが、

より良い社会への一歩として

必要だと思ったから、

犯罪者になり、敗北することを想定し

最悪は殺されることを想定し、

それでも、告発したのだろうと思えました。

その無私の行動は、

真の英雄的行動だと素直に思えました。

 

セキュリティー、安全保障の名の元に

どこまで、個人の自由を制約することが

許されるのか。

全体主義との境界線はどこにあるのか。

トランプ大統領の登場で、

世界情勢が激変する中で、

今、まさに問われている問題です。

 

さらに、映画の中では、

彼のつくったモノが、

標的とする人物の暗殺に使われ、

そこに、何の関係もない市民まで

巻き込まれてしまう様子が

映し出されています。

まるでゲームのように人が死にます。

 

「安全保障」を語るときに

なぜか、個人の命の重さが

相対的に軽くなることを

オリバー・ストーン監督は

明確に認識していると思います。

 

ぜひ、いつか原爆投下の映画を

つくってほしいものです。

沈黙 サイレンス 評価 感想 レビュー ★★★★

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恥ずかしながら原作未読。

外国人宣教師の「棄教」をめぐる葛藤を縦軸に、

アミニズム、八百万の神を尊ぶ日本文化を、

外国人視点で斬る、異色の超大作でした。

スコセッシ監督が日本の文化を深く理解した上で、

外国人から見た驚きを次々と挿入していくので、

文化論として、

非常に価値が高い作品だと思いました。

 

映画は、オープニングから、エンドまで、

日本文化の形成に大きな影響を与えた自然、

風土への、強くて深い畏敬の念に溢れています。

目を閉じても、自然はそこにあるし、

真上から見ると人はちっぽけです。

 

日本にはマグマがつくる温泉があり、

山があり、海があり、波があり、

そして風があり、雨がよく降る。

それらは恵みをもたらすと共に、

時に非常に暴力的です。

だから日本人は古より、

自然に畏敬の念を抱き、

自然の法則に従って生きてきた。

基本的に生きることは、

自然の摂理に従い、耐えることだった。

 

キリスト教では、創造主がいて、

自然現象の全てには、

神の意図があると考える。

だから、神の声を聞こうと、

自然の摂理を分析する

自然科学が発達し、

ひいては自然に手を入れ、

自然をコントロールしようとした。

日本よりも厳しい自然環境だったことも、

文化形成に影響した。

 

しかし豊穣かつ、暴力的な自然に抱かれた

日本人には、元来、そういった感覚が

なかった。

偉大なる自然、さらにはお上には、

基本的に従い、耐える。

そこでは、神は沈黙しているのです。

 

日本人は現世の代わりに来世、

「極楽浄土」で報われることを夢見る。

現世で神の声を聞き、

その道を進もうとはしていないため、

キリスト教布教にとって、日本は

やはり種が根付かない

「沼地」だったのです。

 

作品中の日本のキリシタンのほとんどが、

現世で報われなくても、

来世報われるためだけに

信仰を捨てない。

その中で唯一、現世を生き抜くために、

キリスト教を信じる人物が登場する。

信仰によって、弱い自らを

赦してもらおうとするのだ。

実は、彼こそが、

辛い現世を生き抜くための

宗教を具現化している。

その彼の生き方が、

棄教を迫られた宣教師の葛藤づくめの人生と

最後まで交錯していく。

人生にはわかりやすい絶対的なものは、

やはり無いのだが、

かと言って、信じるものがなければ辛すぎるのだ。

そこに、スコセッシ監督の(または原作か?)

人が「生きていく」ことへの

視座を置いていると思うと、

その人間愛の深さに涙を禁じ得ない。

現代をも完全に貫くテーマ。

早く、遠藤周作さんの代表作を

読み切らなければいけないです…

アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発 評価 感想 レビュー ★★★★

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試写会で鑑賞。

新年早々、非常に痛い所を突かれた映画。

商業的に大きく成功することは難しいと思うが、

そこに価値があると思う。

感じたのは「和して同ぜず」は本当に難しい、

ということ。

ミルグラム実験が明らかにしたのは、

多数派は自己の判断より、服従を選択するという、

人間社会の真実。

服従を選んだ65%の人たちは恐らく

普段は「感じがよく、付き合いやすい」人たちだ。

平和な社会、地域社会における善良な市民であり

同調能力の高い人たちのはずだ。

 

会話に、いちいち疑問を挟めばウザがられる。

まず信じなければ、心を開いてもらえない。

だから、なんとなく信じて、

言われた通りにしてあげる。

空気を読むというやつだ。

いざ、行為の責任が誰にあるか問われたら、

答えは「わからない」となるだろう。

善良な市民が、なんとなく、

みんなのためにした行為だから。

ミルグラムは、そのような心理を

「代理人心理」と結論付けたようだが、

実社会の成り立ちを考えるとより難しい。

全てを判断できない中で、

社会に対するスタンスとして、

同調することを基本とするか、否か、という

問題だからだ。

基本的には同調した方が、

個人が負うリスクは少ないはずであり、

それは人間のDNAに刻み込まれた「性」だ。

赤ちゃんが、じっと人の目を見つめ、

よく笑うのと同じことだ。

 

だから、世の中は、ミルグラムの実験に対して

激しいアレルギー反応を引き起こした。

人間社会が持つ「見たくない側面」を

見える化」した実験だったのだと思う。

「見たくない側面」を扱った映画だから、

商業的には恐らく成功しないと思うし、

「見たくない側面」に迫った映画だから、

商業的に成功しなくても価値があると思う。

 

同調能力、ひいては服従することが、

大半の人間の悲しい性だとすれば、

希望は、悪い命令が少ない、

平和で安心な世の中が築くことにあるが、

それを築けるのは誰なのか?

 

選挙でリーダーを選ぶアメリカでは、

今年、トランプ大統領が登場する。

政治エリートによる独裁を貫く中国では、

習近平氏が共産党大会に向けて

権力のさらなる強化を図る。

安倍総理は三選を目指しそうだが…

そういう「リーダー」達がつくるのか?

同調能力の権化たるマスコミが

危機に際しては健全な批判精神を発揮し、

良い世の中の維持に貢献するのか?

それとも宗教の出番?SNSのさらなる発展?

答えは見えないけど、

課題を自覚した上で、

確固たる信念を持てるはずだという

希望を持ち続けたいと思った。

マダム・フローレンス!夢見るふたり 評価 感想 レビュー ★★★

機内で鑑賞。

愛と打算、打算と愛の物語か。

資産家で芸術活動のパトロンである

マダム・フローレンス。

夫のシンクレアも、伴奏者となったコズメも、

それぞれ、打算があってフローレンスに近づいた。

音痴だが歌を愛するフローレンスが、

その夢を叶えられるように二人は全力を尽くす。

打算の上の関係だが、フローレンスのことを

慮る気持ちに嘘はない。

この映画は、極端な例だけど、

人間関係って、多かれ少なかれ、

こういう二面性があるものだと思った。

愛も、打算も真実だが、

どちらか一つで語り切ることはできない。

片方だけを盲信すれば裏切りに見えるかもしれない。

音痴なフローレンスの歌に観客は喝采し、

そのレコードは飛ぶように売れた。

嘲笑している面もあるが、それだけでは、

売れた事実を説明できない。

世の中はかくも複雑であり、

ポジティブに捉えるか、ネガテイブに捉えるか、

その違いだけだと思った。

そのどちらも正しく、どちらも完全ではないだけだ。

 

マグニフィセント・セブン 評価 感想 レビュー ★★

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「先行」に負けて機内で見てしまいましたが、
観るなら間違いなく映画館で観るべき映画…

ただ個人的には『七人の侍』や『荒野の七人』を
超える要素は特に感じられず。
デンゼル・ワシントンの、
無駄な動きがない銃さばきが、
カッコイイ!こだわりを感じる!
と思ったぐらいだったので、
機内で見るのに、ちょうど良かったかも、
とも思ってしまいました。

映画館で観たら、もう少しましな感想が
言えたかもしれませんが…

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期 評価 感想 レビュー ★★★★

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遅ればせながら機内で鑑賞。

ブリジット・ジョーンズの日記シリーズを観るのは、

実は今作が初めて。

なので、ちゃんと理解できているか分かりませんが、

描かれているテーマは、ブリジット・ジョーンズの

“ナルシシズムとのお別れ”かと。

 

ブリジット・ジョーンズの職場での会話は、

ナルシシズム=自己愛が、

これでもか、とばかりに充満している。

このナルシシズムとフェミニズムの融合した

世界観こそが、

今シリーズ最大の特徴なのだろうと容易に想像がつく。

 

しかし、そのブリジット・ジョーンズも既に43歳。

初めて?子供を身籠もる。

ナルシストでフェミニンな

ブリジット・ジョーンズの欲求を満たしてくれる

米国男性と

そういう寛容さを持たない保守的英国元彼の、

どちらの子供か分からない。

二人の男性の間で揺れる最後?の

ブリジットの恋愛模様を描いている。

 

去年、英国は懐古主義の台頭もあり、

EU離脱を決めた。

自由と寛容さをウリにしてきた米国さえも、

トランプ氏が大統領選に勝利。

世界は再び、個を抑制し、国家が前面に出る

時代に突入したように思える。

 

では、これまでの人生で、

おそらく史上究極の「個人主義の時代」の

恋愛を謳歌してきたであろうブリジットは、

自分とは異なる命を、その身に宿した今、

更なる自由と保守、どちらを選択するのか?

そして、親の都合通りには生まれない子供は、

果たしてどちらの男性の子供なのか?

 

大袈裟かもしれないけど、

第二次世界大戦後の欧米社会が、

反戦と平和の誓いのもとに、行ってきた

個人主義の壮大な実験が、

行き着く所まで来た先に、何があったのか、

その総決算の映画だと考えれば、

非常に今という時代にマッチした感覚を

感じ取ることができる映画だと思いました。

 

ぜひシリーズ全作を見て、

時代の変遷を感じてみたいです。

ニーゼと光のアトリエ 評価 感想 レビュー ★★★★★

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社会性と個性の関係性を、

この上ない形で、世に示した傑作。

個の精神の健全性を脅かすのは、常に社会であり、

精神の傷を癒やせるのも、また社会だけだ。

 

統合失調症の患者は、他者との関わりの中で、

何らかの傷を負い、心を閉ざす。

その方法は、自らの発信能力を消滅させ、

コミュニケーション網から隔絶されること。

彼らは傷つきやすい心をこれ以上、

侵されたら耐えられないと無意識に判断し、

致命傷を避けるために、

他者との接点である言語性を

放棄している可能性が高いのだ。

 

つまり、

心が壊れてしまったかのように見える彼らは、

実は、壊れてしまいそうな心を、

他者から閉ざすことで

守っている可能性が高いのだ。

脳に対する外科的処置などは、

そんな彼らに対するトドメの一撃であり、

治療とは正反対の攻撃だ。

 

患者に必要な「治療」とは

心がこれ以上、侵されることはない、

心は守られる、という絶対的な安心を

与えられることであり、

コミュニケーションしよう!という

他者からの継続的な問いかけを受けること。

 

そして思考力、言語性を回復させながら、

自らの心が壊滅的な危機にはないと

自ら納得するための心の整理が必要だし、

自分の気持ちが他者にも見えることに

再び慣れるための訓練も必要だ。

 

それが、絵を描くことだったのだ。

 

映画の中の、最後の「叫び」が印象的だ。

社会は強者や多数派の論理を

「ルール」として押し付けがちだ。

それによって個が抑圧されることは、

精神病の範疇の話ではなく、大なり小なり、

毎日のように繰り返されている。

 

ニーゼは

「人生には一万通りの道がある」と言った。

それを受け入れられる秩序を

どのようにつくるか?という大命題は

いまの社会にも変わらずに存在し続けている。